そして恋人へ

「あれから、父親の方で
暮らしていたんですけど
何かのきっかけで
学校帰りにホストに誘われて
そこからお金を、佐竹の今の奥さんに
もらって、遊んでたらしいんです
ホスト遊びしてたなんて
だから、私が引き取るって言ったんです
今の奥さん、ずいぶんお金を出して
佐竹はお金持っていませんからね
それで、もう、お金も底をついて
私のところに相談に来たんです
それで、やっぱり私が引き取ろうって
話をしていた時に
その、ホストを刺しちゃったって!」

母親はそこで泣き出してしまった
康太はすぐに警察に飛んで言った

知り合いの刑事に詳しく話を聞く
優未はまだ、病院にいるらしい

「え?彼女も怪我を?」

「ええ、そんなひどくはないらしいんですけど
精神的なショックがひどいらしくて」

「いったい、どうして」

発達障害の母

「え?それ、だめなの?」


私は呆れすぎて笑ってしまった


「だって、私がもしお金を貸すとしても

その女の人と家と両方でやっていって

返す当てはあるの?」


「いや、それはわからなけど

もっと、頑張るから」


「そんなぁ、だったらお金あっても

貸すのは嫌だよ〜」


ケロとネコも笑いながら


「でもさ〜それって、友の中学の頃からの夢だよな、なんか、そんなこと言ってたぞ!」


「あ〜そういえば友の夢は結婚してめかけももって大金持ちになるってクラスのみんなの前で言ってたぞ!」


「そういえば、そんなこと言った記憶があるな

俺、夢は半分叶えたってことか」


もう、この男たちは一体何を言ってるの?

そう思いながらも、やっぱり笑ってしまう


そして恋人へ

もう、二度と二人で会うまい
そう決めて、もう、優未のことは忘れようと思った
優未の高校の問題も、今の高校に上がるってことで
だいたい答えは出ていた
夫婦関係も円満離婚で
康太を必要とすることはないはずだ

それから半年
康太はあの時の優未の姿がすぐの頭に浮かんでくるのを
喜ぶと同時に、困りもしながら
優未のことは忘れられないまま生活していた

そんなある日、突然
優未の母親が飛び込んできた
優未が警察に捕まったというのだ
母親は康太に弁護してほしいという

「落ち着いてください
いったい何があったんです?」

康太は自分に合わないことで
優未は中学生の女の子らしい日々を送っている
それは平和で楽しい日々だと信じていた

発達障害の母

ネコはこの村を愛している

出来たら、公立に進んでほしいと思っているのかもしれない

それに、この村で一生を過ごすのならば

大学はまだしも中学はやっぱり公立が正解だろう

村に残った仲間は、高校からはそれぞれの道に進むが中学のころまでの共通の思い出は大事なものだ

私たちだって中学まで一緒だからこそ

こうして数十年ぶりに会っても話が合う

できるだけみんなから離れていた私ですら・・・だ

友くんは私のほうを見た

 

「なんか、東京の家ってすごいらしいじゃん

お願いできないかな」

 

まったく、困ったものだ

 

「私、専業主婦だよ

お金なんか自由になるわけないじゃん

それよりも、これからずっと、その女の人と

別れないでやっていくの?

お金どうのこうのよりも、そこでしょ!」

 

そして恋人へ

その日から康太は優未に会えなくなった
もし会ったら、いい年をした大人の男が
中学生の女の子に心を持っていかれてしまうなんて
誰にも言えないし
もはや犯罪でもある
そんな犯罪はたくさんある
自分が扱った案件でもあった
息子が、それも30になる息子が小学生の女の子の
ストーカーをして捕まった
なんとかしてくれ!
そんな男に会ってみると思いのほか
普通の男でまじめな人間だ
そんな男の言い訳は

「ただ、かわいいと思った
それだけなんだ
何かしようと思ったわけではない
でも、いざ、誰もいないところで二人っきりになったら
一回だけでもいいから抱きしめたくなった」

それを聞いたときにわけが分からないと思った
しかし、今、自分もその男と同じになりそうで怖い

発達障害の母

「それは難儀だな~

俺は何とかしてやりたいけど

息子にはたかれないからお金はないんだ」

 

ケロがすぐさまそう言うと

ネコも

 

「俺んちもないの知ってるだろう?」

 

「え?お前んち、娘を私立に入れるって評判だぞ

寮に入れるのか、奥さんが付いて行って

近くにアパートを借りるかって

豪勢な話じゃないか」

 

友くんはネコの家の話をよく知っている

いや、この村なら当然だ

うちだって母が何でも喋るから

村中が私の財布の中身まで知っているかもしれない

しかし、母は見栄を張って嘘もよくつくから

かなり多めに話が通ってる

ネコのところのことは、私もお金の心配はしていた

 

「ああ、あれは奥さんが実家に頼んで

何とかするんだって話だから

俺とは関係ない!」

 

ああ、そういうことか

そして恋人へ

小学校から女子校育ち
近くにいる異性はだらしない父親だけ
優未は弁護士である康太に憧れていたのだ
悩みを話せば親身になってくれて
優未が今まで周りにいた大人からは
聞いたことのない話をしてくれる

学校のみんながあこがれている若い男の教師の
数倍かっこいいのだから
中学生の女の子に恋をするなというほうが無理なのかもしれない

「いや、会うのはやはり、事務所かこの前のカフェにしよう
うちは掃除も行き届いていないしね」

そう言って康太は慌てて立ち上がった

「今日はここまでにしよう
やはり、他の学校に変わることは考えないほうが
いいかもしれないね」

そう言ってカバンを持つと
優未はその手を捕まえて

「私、先生のことが好きなんです」

康太はその言葉にドキドキしながら
そう言われればうれしいけど、とにかく自分は
ロリコンではないし、

「それは、困るな
まぁ、たまに相談には乗るから
今日はこれで」