発達障害の母
「見た目だけではわからないんですね
私はあんまり噂でしかわからないくらい
御宅のお母さんは村の人たちが
少しオーバーに言っていて
実際話すと普通の人にしか思えないんだけど」
そうだ、もう、私たち世代くらいは
よっぽど母と深い付き合いをしなければ
そんなにわからない
母自身もなんとか上っ面は誤魔化す
すべを身につけている
しかし、小さい頃学校で一緒だった
祖父母世代はよく知っている
学校でみんなと同じようには
教科書も読めないし、字も書けない
そして、青春時代
これぞと見つけた男には体をぶつけて行くように
つきまとう
うちの父はその誘惑に負けて
結婚してしまった、と言ってもいいかもしれない
「そう、だから、弟と二人
私たちは将来を考えるなんて
全くなかったし
父もそうだけど、母から逃げることだけ
考えていたのよ
発達障害の母
「ううん。
私にはよくわかるわ
私はあの母だから
子育てとかじゃなく、とにかく
他の人と同じようにしなきゃ
言われた通りにやらなきゃ
そんな風に物心着くまで育てられて
自分でトイレが完璧にできるようにいなると
母は自分の生活が精一杯で
これは比喩じゃなくって
掃除とか洗濯とか料理が
毎日同じ状態で完成されて
そこから、多くの主婦は自分なりのやり方や
工夫、手抜きをしていくんだけど
母は成長ってできない人だから
未だに炊飯器でご飯を炊くのにも
毎日、ばらつきがあるのよ
メモリとかグラムの概念がわからないのね
だから、子供のことにまで
頭は回らなかったのよ
仕方のないことだったんだけどね」
発達障害の母
「それは、母親としては
だれだってそうよ
ひと時代前だと産んでやったみたいな
感覚だけど
私としては産んだ責任は重いと思うわ
子供は親を選べないんだから」
「あ、その通りです
あの子を生んだ以上幸せになって欲しいし」
「中学受験で悩んでるんですって?」
「夫はここで生まれて、それなりに苦労して
今の自分に納得しているんです
私だってここで生まれてここに帰って来て
納得してるし、幸せだと思ってるんですけど
樹奈はまだ、ここの中しか知らないでしょう?
少しでもいい環境で学んで欲しいと
願うことはいけないことでしょうか?」