発達障害の母
次の日から私も母と一緒に歩くことにした
間違いであってほしいが
私には学生時代の自分がよみがえった
田舎の小さな村から東京の大学に入った
誰一人知り合いはいなかった
何を着て何を喋ればいいのかもわからない
ただ、おとなしく講義を教室の片隅でひっそりと受け
誰にも気づかれることもないまま、さっさと帰る
授業が終わればバイト漬けの毎日
バブル真っ最中、うちの大学くらい有名ならば
いくらでも割のいいバイトがあったはずなのに
田舎者の私はわざわざ、小さな立ちうどん屋で
一晩中バイトしていた
おしゃれな喫茶店や事務所のドアを叩くことが
気後れしてできなかったのだ