手に入れた物

ミキは全く受け取る筋合いのないものだと
言いながら
母のことを考える
この人は全く母を誤解している
うちが貧乏だったのは爺さんの遊び癖
そして、母親が男に貢ぐからだ
お金のない若い男が好きで
男の気を引くために父親が稼いだお金を持ち出す
最悪な母親だった
お金を自分のために使うことはまずなかった
だいたい、いつも安物の趣味の悪い服を着ていたくらいだ
遺産をくれると言っても興味なかっただろう
康太の学費、家の食費、みぃの服
どんなに苦労したかわからない
娘にしたらイライラすることばかりだし
今はお金は必要ない
そこそこ幸せに生活していくくらいはあるし
速水が莫大な金額を稼いでいる

「父は仕事が決して嫌いでもなかったし
あの頃のことですから、周りも朝から晩まで仕事をして
毎晩、接待だのなんだので会社の付き合いも多かったはずなのに
自分の出世も投げ出して、ただ、ひたすらに
私を育てることだけを一生懸命やってくれたんです
そんな父に申し訳ないと思っていました
定年退職した後も、趣味もなく私が独立したからは
寂しそうに毎日を送っていました」