発達障害の母
「夫も早く死んだしって、
殺したんだよ!」
「ちょっと、あんた、言っていいことと
悪いことがあるだろう」
私はおかしくて笑いそうになる
皆、千絵さんが殺したと確信している
ただ、そんな恐ろしい人と付き合いがあったなんて
わかったら、大変だから
口に出しては言わない
私はこの村の生まれだから、その辺りの微妙な空気がわかる
今まではわからないふりをしていたのだ
それも、これまでだ
「千絵さんはよく、うちに来てくれてたんだよ
三ちゃんがあんなだったし、あんたと同級生だったろう
だから、死んだあと、何かと野菜をくれたり
煮物を作ったって言っては持ってきてくれたりね
お父さんが死んでからは
本当によく顔をだしてくれたんだよ」
母は急に近くの人に聞こえるように
そんな話をし始めた
私には村の人の気持ちもわかるように
母の気持ちも手に取るように分かった
千絵さんが今日の主役だ
その主役とつながりがあったことを披露したいのだ