理想の父
章子は康太を見た
雅紀は嬉しそうに
「あ。章子の家のママは絶対だめだよ
いっそのこと黙っていようよ」
だいたい、小学生みたいな答えだ
しかし、康太も
「そうだな
実際に結婚するまでは数年あるんだから
黙っていたほうがいいかもしれない
どんなに一生懸命話しても
人には生まれによって理解できないことがあるんだよ」
速水もうなずいた
「そうね、小百合さんは雅紀君と付き合うことは
あきらめているんだから
このまま黙っていてもいいと思うわ」
雅紀は秘密にすることさえ嬉しそうだった
章子も、母親の気持ちを変えることなどできるとは思えなかった
だいたい、自分が育ったのと同じように
育てて、それが間違いのないことだと思い込んでいるのだから