理想の父

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あの頃はこの男がうらやましくて仕方がなかった
しかし、今はもうそんな気持ちは飛んで行ってしまっていた

「あの頃、うちの家の近くに
親父と同じトラック運転手をしてた家があっただろう?
あそこも君んちの土地だったんじゃないの?
あそこの爺さんとかどこに行ったか知らないかな?」

「ああ、あそこのじいさん、立川のほうの
老人ホームに入って、亡くなったって聞いたよ
いや、実はあそこの親子はうちに借金があったからさ
払ってもらうまでのあの家の経緯は知ってるんだ
康太んちのおやじと一緒にトラックの運転手をしてた
おっさんは、その保険金が入ったって聞いたから
俺がすぐに取り立てに行ったんだ
そしたら、何か頑張って調理師免許を取って
ほら、ここの駅の裏にラーメン屋が出来てるんだけど
あそこの亭主がそうなんだよ
一時期はテレビも来るほどの客が並んでいてさ
あのおっさんがこの間引退してからは
サッパリだけどね」

「へ~人間なんてどうなるかわからないな
それで、そのラーメン屋に行けば会えるのかな?」

「うん。客足が途絶えてから、心配して
もう一度店に立ってるって聞いたよ」

康太はそのラーメン屋を訪ねた
康太の前に12人くらい並んでいた
また、味が戻ったのだろうか
順番が着て店に入ると
トラックの運転手だったあのおっさんがすっかり痩せて
爺さんになっているのに驚いた
そりゃそうだ、あれから何年たっただろう
父が死んでから・・・・