理想の父

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相変わらず小汚い町ではあったが
駅を降りると
タワーマンションがそびえたち
康太が育ったあたりはすっかり美しい公園に変わっていた
もう、あの頃の人間は誰もいない
そう思って、その公園の近くの
小さなしゃれたカフェに入った
コーヒーを注文して、みぃにラインで聞いてみよう
そう、思っていると
中のマスターがコーヒーを運んできた

「もしかしたら、康太?」

え?そう思って彼を見ると
小学校のころよくいじめられた八木だった

「あ、八木!ここって、もしかして工場があったところ?」

「そう。工場は親父の代で終わったんだ
土地はうちの物だったから、半分は売って、半分はこれ!」

「この辺りも綺麗になったな~」

「お前、東大に行って弁護士になったんだってな~
中学を合格したときから
俺らとは違ってたもんな~」

小学校のころ、八木が塾に通っていて
羨ましく思ったものだ
姉が帰って来て、進学塾に入れてくれなかったら
ずっと、ただのいじめられっ子だっただろう