旅をしてきた

この会社には秘密がある

殿村は風俗小屋時代からのスタッフだ

あの小さな風俗小屋に雇われたのは

まだ、十代だった

四国の田舎から家出同然で東京に出た

中学を出て、近くのガソリンスタンドで真面目に働いていた

高校に進んだ輩がやって来て

仕事中に面白おかしく揶揄する

我慢はとてもできなかった

その中の一人を思い切りぶんなぐって

その足で東京行の電車に乗った

ぶん殴ったのは父親の上司の息子だった

やばすぎて、家に帰れない

東京に出て来ても、どこにもあてはない

東京駅に降り立って、オドオドしていた

そこを正二さんに、声をかけられ

あの小屋に連れて行かれたのだ