秋風

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速水はみぃから聞いていた
自分の母親であるミキを想い続けた人
母はずっと、父親を追っていたから
結局、死ぬまで片思いだったという正二
彼がいなければ叔母であるみぃは
いったいどうなっていたことだろう
正二の写真は一枚もないから想像もできないが
ショウが似ていると聞いていた

ああ、確かにショウに似ている
大木が一体どんな人間かは知らないが
それだけで、優しくしたくなる

ショウは自分とほとんど同い年で
かなり似ている彼を母親の秘書としては
全く見ていなかった
ただ、恵さんから父親によく似ているから
雇ったんだと思う
そう聞いていて、顔が見たくて仕方がなかったのだ

「あ、よろしくお願いします」

そう言って堅苦しく立ち上がって礼をする大木
みぃはこんなところ、こんなところが正二に似ている
そう感激していた
育ちは風俗の小屋なのに、いつだって礼儀正しかった
正二は大木のように高いスーツを着ていることはなかった
いつだって、小汚いトレーナーにジーンズ
でも、ものすごく色が白く華奢な人だったから
スーツを着せたら、きっと、この大木のようだっただろう