.....の無い

康太は大学の入学式に出席しないというミキにさっきから一生懸命だ

「ねぇ、姉さん、頼むよ!
大学にこうして入学できたのも姉さんのおかげだよ
あの時に、姉さんが帰ってくれていなかったら
じぶんでも、怖いよ」

そして、バイトのお金を差し出した
この春休みにバイトで稼いだお金だ
あれから爺さんも亡くなり
この家では金銭的に困ることはなくなっていたが
これからの康太の将来を思うと
無駄なことには使えない
入学式に行くにはそれなりの服がいるけれど
そんな服は姉さんは持っていない
そう言ったからだ

すると、ミキも笑い出して
お金を差し出した
これはミキが近くのスーパーでパートをしたお金だ
康太が塾に行っている間こっそり始めたのだ

「これは、康太のスーツを買うお金だよ」

お互い大笑いしてしまう
ただ、ミキにとっては康太の大学に行くのは
昔がよみがえってくるようでつらいのだ
そこには多分、今でも沢村がいるはずだ