......の無い


「ミキちゃん、そろそろ、嫁にでも行ったほうがいいよ
康太はしっかり者だし、爺さんは
あれだけ健康に気を付けているんだから
ミキちゃんいなくてもやっていけるさ」

近所のおばさんたちが気軽に声をかける
ミキが小さな子供時分、この家は近所中から嫌われていた
そりゃ、そうだ、母親がこの近くの男という男を
もちろん、旦那たちも片っ端から寝取っていたし
まともな仕事にはついていなかったし
爺さんは若いころはキャバレーの客引きだった

それが、今はこんな風に普通に言葉をかけてもらっている
父親はあれから交通事故で死んだ
それも、相手が全面的に悪かったから
ありがたいことにミキが働かなくてもお金には苦労しなくなった

あれから、みぃは帰ってこない
康太は都内でもトップの高校に通い
爺さんはこの町の中でボランティアのゴミ拾いをしたりして
近所の人に好かれている
みぃのこと以外には心を曇らせるようなことは何もなくなっているのだが