......の無い

帰ってみると母親はいなかった

「なんだ、もう、出て行ったの?」

爺さんがテレビを見ながら知らんふりをしてる
今夜はすき焼きにでもしようと
材料を買ってきたが、あの母のことだ
挨拶もなしに出て行ったとしても仕方ない

「おじいちゃん、今晩はすき焼きだよ
康太は塾で帰ってこれないから
みぃと母さんの分も肉食べてね」

そう、声をかけるが、やはり黙っている
ボケたのだろうか?
まさかね、そう思って夕ご飯の支度をする

「そういえばみぃは?
友達のところにでも遊びに行ったの?
京子ちゃんとこかしら」

そういいながら食卓にすき焼きのコンロを置くと
茶碗を出す

爺さんが小さな声で

「みぃはあれが連れて行った!」

一瞬、何のことかわからない
母は子供なんて足手まといなはずで
男に嫌われるから、外では独身だとか言っているくらいだ
子供を連れていくはずがない

「は?あれって?」