......の無い

人間同士は、単純な問題ならば分かり合えるかもしれないが
きっと、それは母親であっても
分かり合うことなんかないのだ
分かり合えるという人は幸福だと思う
それは運がいいのだ
そういう母親に生まれたかった

自分が憧れた翔子、沢村、
そばに寄り添いたいのに寄り添えない
それは、こんなことの積み重ねだろうと思う

康太は今、一番キラキラ輝いていて
ミキは康太が喜んでくれているだけでも
帰ってきたかいがあったと思う

駅の前で暗記すべきことを書き出しているノートを
真剣に見つめながら
ミキが来ると、嬉しそうに弁当を受け取る

「今日のテスト、絶対満点とる!」

そう言いながら改札に走っていった
康太は夢をかなえるためにたゆまぬ努力をし
結果を出して、今が楽しくて仕方のない時かもしれない
そう、思うと母親のことは頭から振り払った
こんな風に気持ちが通じ合って、一緒に頑張れる姉弟
これは母がいなければなかったことだ

母親に何かおいしいものでも作ってあげよう
そう思いなおして帰っていった