.....の無い

爺さんは穏やかになり
康太は都内でもトップクラスの国立中学を狙えるほど
成績が上がってきたころ

みぃがそろそろ帰ってくるからと
みぃの好きなパンケーキでもおやつに焼こう
そう思って小麦粉を卵と混ぜる
爺さんもパンケーキは大好きだ
康太には塾用の弁当のデザートに入れてあげよう
楽しく鼻歌を歌いながら焼こうとしていると

「パンケーキ?
あたしもよばれて行こうかしら
最近はやりよね
あんた、料理、うまいじゃない
家も小ぎれいになって」

台所の入り口で母親が立っていた
少しうんざりした
また、男に捨てられて帰ってきたのだろう
それでも、その服やバッグはまともになっていたし
一見、水商売には見えなかったから
普通の生活のできる男と暮らしているのかもしれない

パンケーキを並べたころ、みぃが帰ってきた
みぃは母親に嬉しそうに話しかけている
無理もない・・・・
爺さんも嬉しそうにパンケーキを食べている

「康太の弁当を届けてくるわ
夕ご飯、食べていく?」

「康太の弁当って?」

「お兄ちゃん、塾に学校からそのまま行かないと
間に合わないから、お姉ちゃんがいつもお弁当を
駅まで持っていってあげてるの
お兄ちゃん、帰ってくるの10時くらいだもん
すっごく、頭いいんだよ!」

「は~中学受験でもさせようっての?
なんだか、すごいことになってるね」

その言葉を背中に弁当を持って苦々しい気持ちで家を出た