.....の無い
父親がご飯を食べている間にあわてて作ったおにぎり
中身はおかかしかなかったのだが
その大きなおにぎりを三つビニールに入れて渡した
「お茶は買ってね
体壊さないでね!」
そう普通に言っただけなのに
父は泣きそうな顔になって出かけていった
普通の、ごく普通の家
それが、なんだかあったかかった
父親はミキが今まで何をしていたか聞かなかった
この家の子供だ、どうせ風俗かなんかだろうとわかっていて
聞くことを娘に遠慮したのだ
その気持ちが悲しく嬉しかった
康太は成績を伸ばし
爺さんは町内のゴミ拾いのボランティア活動なんかやって
近所を驚かせ、みぃはのびのびかわいらしく育った
小学校入学の時には奮発してワンピースとランドセルを買った
それだけでも大喜びで
「わたしもお兄ちゃんみたいに勉強、頑張る!
お兄ちゃん教えてね」
ミキがここに帰ってきて作り上げた家庭
それは毎日、この家の中に笑い声が聞こえる
楽しいもので、沢村のことは過去のこととして封印できた