.....の無い

爺さんは慌てて出てきた
腰が痛そうで、腰もずいぶんまがっていた
昔と違っているのは爺さんがやはり年を取っていたことだ

「えっと~、ああ、さっきの
道わかりませんかな?」

ミキはもう、何がか吹っ切れていた
自分の中で沢村と一緒になれないのなら
どんな人生でも構わない
沢村と一緒になれない理由が自分の中の
この場所にあるんだから
どこであがいても一緒だ
それなら、ここから何とかしよう
何とかしても沢村とは一生一緒にはなれないだろうけど

「じいちゃん、ミキだよ!」

爺さんは少し首を振りながら
ミキをじっと見た
ミキは笑いたくなる
毎日毎日、ここのことが奥底にあって
苦しんで忘れたくて、自分のすべての根源なのに

爺さんは自分の孫ですら忘れている

「ミキ?ああ、そういえば一番上の姉ちゃんだ
もう、長いこと連絡もなかったし
どっかで生きてるだろうとは思ってたが
別嬪になったなぁ~
まともに生きてそうだな」