.......の無い

玄関の前に立っているミキを見ても
じいさんは何もわからなかった

「なんか用かね?
ああ、この先だろ!
右に曲がって、少し込み入った路地を抜けて、
左にちょっと、言ったところだよ!
有名な台湾料理の店!
最近、テレビに出たとかで探しに来る人が多いから
こっちが覚えちゃったよ
俺は言ったことねぇけどよ
若いねぇちゃんがよく道に迷ってくるからなぁ」

そんなことを嬉しそうにしゃべる
道を教えるだけでも
そんな『若いねぇちゃん』としゃべるのが嬉しいのだろう
そういえば、このジジイも女好きだった

ミキは名乗ったものかどうか迷った
やはり来てみると最低のところでここで育ったなんて
沢村には言えない