.....の無い

ミキは周りを気にしながら
苦笑いして別れた

新幹線が出て行って踵を返した途端に
黒いスーツケースに躓いた

ここは東京駅
新幹線は始発だ
見送り以外にここに残っている人間は
特別な事情が無い限りいないはずだ

「あ、ごめんなさい」

それはミキの今まで知らない声
まぁ、風俗の世界の声では無い
あの、社長の所で中小企業の周りにいる
男の声でもなかった

スーツケースにから頭を上げると
同い年くらいだろうか
30前後の仕立ての良さそうなスーツに
真っ白なワイシャツと趣味のいいネクタイ

ど真ん中!ミキは思わずそう思ったが
自分の生きている圏内の人では無い
とっさにそう判断した
吸っている空気が違う