刷り込み

あの頃は泣き叫ぶ母親をかわいそうだと

父を恨んだが

今、思えばあれはあれで、面白いことだ

だいたい、母親は見栄っ張りで

頭の悪い女だった

父が美人の秘書、それも

無一文になってもついてきてくれる

そんな美人の若い秘書を

手に入れたことってすごいと思う


あの後、母は愚痴を言いながら

すぐに病気で死んだが

自業自得だとキナは思った

世間や親戚は

かわいそうだ!とか父親を鬼だと言ったが

その前の母こそ

そう、言われるに値するような

母であり、嫁だった


キナの勉強でもお稽古でも

誰々ちゃんに負けちゃダメ!

それが全ての理由だった

いつだって、母親の顔を潰すな!

自分が子供よりも大事だった