刷り込み

貞丸は唐揚げ棒を食べ終わったキナに

飛びついた


「今回も何もしなくてよかったんだね

良かった!」


キナは変な話だと笑った

微妙なラインの若い男を狙う

そいつは小金を持っている

明日、振り込まさせるのも300万

頭は少し悪い程度

でも、田舎から出てきて真面目

本当のセレブのおばさんなんか全く知らない

キナは昔、自分の家が金持ちだった頃を

思い出した

私立の小学校に通っていた

お母さんたちはみんな、質素

もちろん、安いものなんか着ていないけれど、華美なものは身につけていない

本物の真珠、仕立ての良い紺のスーツ

派手な人もいるがそれは成金


父親の周りの社長クラスのおばさんたちだって、みんな、堅実で厳しい顔をしていて化粧はあまりしていない

誰もが、小太りで男社会と張り合うために

キリッとしていた


キナが演じているのは

社長の妻だけど水商売上がりの

上品な派手さを持っているおばさん