速水の悩み

タケオを横目で見る
少し顔を赤くして、焦りながらグラスを二つ用意している
この世界のノウハウはすべて知っている
この世界の女と恋に落ちるすべも知っている
でも、いくつなんだろう?
どうして、この仕事に入って来たのだろう?

もう、数十人、いや、百人近くこの手の男を知っている速水は
不思議そうに考えた
東京の出身じゃないな
服がダサい、それなりのお金をかけて決めてはいる
それは事務所に口うるさく言われているはずだ
お金持ちの女たちやおばさんを相手にするのだ
きちっとお金のかかったものにするか、おばさん相手ならば
カジュアルなものでもさわやかなものを
そう言われているはずだ

そのさわやかさがダサい

「その服、自分で選んだの?」

真っ赤になった

「あ、その、今日は違う予約が入っていて
急にあなたのところになったから....」

ハーミーは笑い出した

「ああ、金持ちのババァって言われてたのね
それが急に私になった
最初から私ならスーツにしたところなんだね」