風邪をこじらせて
「もしかしたら、それは、
僕の子供を産んだんじゃないか
そう思ったんだけど、違ってる?」
もう、何十年前のことだろう
確かに大人になって気が付くようなことだ
「そう、東京の病院に行って産んだのよ」
「やはりそうかそれで、その子はどうなったの?」
私は当たり前のことのように
「渋谷の、ほら、あの坂
あの坂の途中に美味しい話題のカレー屋があるの
知ってる?」
今は彼も東京在住だ
「ああ、知ってる
うちの会社の近く
あ、食べに行ったこともある
夫婦でやってるとこだろう?
30代くらいの」
「そう、その奥さんのほうが私たちの子供」
彼はすぐにスマホを出して調べる
そこには夫と幸せそうに並ぶ彼女がいた
「ああ、きみに似てる!」
彼は嬉しそうに声をあげた
「大変だっただろう?
すまなかった」
私は大変なことなど一つもなく
彼女が伸び伸びと育ったことを話した
「そうだったのか・・・」