逃亡
「お金があるんなら
せめて、その服何とかしなよ」
巴ちゃんの高校時代の赤いジャージの上下
その上に多分、旦那のであろうジャンパーを羽織り
靴はその息子だった男の子のスニーカーじゃないか
髪の毛は伸ばし放題、半分は白髪
白髪なのは良いとしても、一緒に暮らすと
全く風呂に入らないから、髪の毛はべたべただ
大きな荷物は、業務用スーパーのエコバッグ
これは自慢の種で
東京に来てから、東京のスーパーでもらったと喜んでいる
たまに電車に乗ると
変わったおばさんが東京にも何人もいるが
もはやそのものだ
「え?巴の体操服、長持ちするんだよ
あの子は大事に着ていたからね
なんかのテレビでジャージのズボンは東京の渋谷あたりで
流行っているって言ってたよ」
もう、余計なことを言うのは辞めた
着くと、ホテルに荷物を預けてタクシーで
『福岡のかずちゃん』の家にまっすぐ行った
「あんた、タクシーなんて贅沢だね~
もうちょっと、節約しなよ!」
私が払うのだ、放っておいてほしい
かずちゃんの家はこじんまりした小さな家だ
庭も狭いが、アジサイが咲き、美しく手入れしている