逃亡

チェリーはただただ、嬉しそうに座っている

 

「それで、手ぶらなのかい?

どこに隠したんだい?

警察だけならまだしも、変な輩だと困るよ

いくら、チェリーのお腹の父親でも

追い出すからね」

 

私がすべてを知っているのに驚いたように拓は

食べる手を止めた

 

「たぶん、つけられてはいない

警察はまだ、本当は何があったか把握してない

‥‥と、思う」

 

「そうかもしれないね

で?恵比寿で死んだ男を殺したのはあんたなの?」

 

ショウがちょうど入って来た

 

「殺し?」

 

拓は力なくうなずく

 

「殺そうと思ったわけじゃないんだ

ちょっと、突飛ばしたら、死にやがった

だいたい、あいつが死んでくれなきゃ

あいつに殺されていたのは俺だ!」

 

わけのわからない物騒な話に

チェリーは笑いながら

 

「何?おばあちゃんの大好きサスペンスドラマの話?」