発達障害の母
昭和30年あたりの頃のことだ
世の中は高度成長期に入るころ
東京オリンピックがあると言うので
何処の家もテレビを買うようになった頃だ
父と母が知り合ったのもこの頃で青年団の集まりで
隣同士の町でもあったから、何度か顔を合わす
その頃のその小さな田舎は世間よりもずいぶん遅れていた
テレビを買っていたのは村でただ一軒の金持ちの家だけ
金持ちと言ってもその村でってことで
世間から見ればみんな貧しい生活だった
父はその頃、馬喰で儲けた成金の息子で
母は隣の群の小さな村の村長の娘
父は母親に可愛がられた次男で五人兄妹の四人目
母は8人兄妹のちょうど真ん中で
その頃には世の中的に認識されていなかった発達障害でもあったから
誰もまともに相手をしなかったし、親も普通にしてくれれば
問題さえ起こさなければいいと考え、他の家には
あそこの変わった子供くらいの認識だった