その先

東京に出てくるまでこの住所が一体どんなこところなのか想像もつかなかったが嫁のおかげで、東京は人間の棲み分けが田舎よりも凄いことを知った山の手、下町、おしゃれな商業地区年寄りだらけ、そして、若者だらけ澄子ちゃんの、私が持っている住所は相当な…

その先

それ以来会っていないが私が夫が死んで全てをたたんで東京に出てこようと決心したのはこの、小学校の時の澄子ちゃんの手紙の影響だった澄子ちゃんは私がテレビの中でしか知らない東京をその文ですごく素敵に教えてくれたそれはテレビではわからない本当の東…

その先

私と澄子ちゃんはそのあと中学生になるくらいまで文通をしていたその頃、少女たちは文通をしたくて仕方なかったレターセットを買うのが小学生の女の子たちの楽しみだった特に、東京の澄子ちゃんからの手紙は可愛かったり、美しかったりでその頃の私の一番の…

その先

二人が気まずそうに黙ると澄子ちゃんは「ママってね、パパと喧嘩ばかりしてるの東京育ちだからこんな遠くの村に来ることは嫌だったの私にも中学受験があるし、勉強も遅れるからって嫌だってパパに言いなさいって言ってたのでも、私はパパと離れるのは嫌だっ…

その先

澄子ちゃんだった別に悪口を言っていたわけじゃないが二人ともドキッとした「ママがごめんなさい」村の中で母親をママと呼ぶのは誰もいない二人ともそれだけでなんだかすみこちゃんはテレビの中の人の気がする母親のことも、あんなに子供の勉強に関わる母親…

その先

「全然気にしてないよ!だって、うちなんか澄ちゃんの家に比べたら貧乏百姓なんだから」私は家で両親が言っていた言葉を思い出してそう言ったミクちゃんは「ううん、うちのお兄ちゃんより花ちゃんの方が頭がいいっておじいちゃんが言ってたそう言うのって貧…

その先

それ以来、村の誰彼に会うと澄ちゃんの母親は「花ちゃんって子は抜け目がなくてこまっしゃくれている」そう、吹聴して回っているようだった私は全く気にもしなかったし村の人間は、澄ちゃんの家の父親には何かとお世話になるから『うんうん』とは言っている…

その先

私は、すぐに澄ちゃんのお母さんの前に飛び出すと「ごめんなさいおばさんのせいじゃないの澄ちゃんの方がすっごく頭がいいよ!私帰るから」そう言うと、二度とその家には行かなかった夏休みが終わって、その中学生が帰る前に私に入らなくなった教科書をくれ…

その先

私が無邪気に行こうとすると澄子ちゃんの母親が私の手を引っ張った「花ちゃん、邪魔しないでね」すると、まぁちゃんのおばさんが「花ちゃんは、この村でも一番の秀才で清春(開成の中学生)の小学校の頃より頭がいいよすみちゃんの勉強にもなるよ」そう、悪…

その先

その話を聞いた澄子ちゃんの母親がうちの子の方が賢いとでも思ったのだろうまぁちゃんの家に澄子ちゃんをしょっちゅう連れて来ては勉強を見てもらっていた1時間500円払っていて開成の中学生はいいお小遣いになったようだその勉強中には母親は大きな立派なお…

その先

それでも、私が内容を話すと大喜びで「お前すげえな!じゃ、これは」そう言って、宿題を出して来たまぁ、さらさらとはいかないが社会や理科の知識部門は父が私に中学の時の教科書を何度も読ませたからだいたい知っていることだったただ、数学は無理だ父はや…

その先

その中学生の名前も忘れたが私は彼の持ってきた本をまぁちゃんから見せてもらったそしてその中学生に「この子、この村でいちばんの天才この本スラスラみ読めると思うよ」それは山岡荘八の『徳川家康』だった私は父の本の中にそれを見つけて面白さに時間を忘…

その先

一年生の夏休み近所の家に都会からやって来た中学生がいた村のものには分からなかったが中学は公立とかでは無く開成中学だとその親戚は自慢していたがその事の価値など誰も知らないそれが、澄子ちゃんの家だけはそれがどれだけ凄いことか、よく知っていたそ…

その先

アイウエオや1足す2から始めている澄子ちゃんに比べてずいぶん難しい本を読まされていた私は元々、そう言うことが好きだったこともあっていろんなことをどんどん覚えて教え方が下手で、あまり知識のない母親に愛想を尽かし、そのうち父になんでも教えてもら…

ひとつ先

田舎の農家の子供である私にはいや、私だけじゃない誰もが驚いたでも誰もが「やっぱり、都会から来た人は違う!」そう言ったものだったが私の母は違っていた「うちも、幼稚園にはやれなくても舞にも同じくらいのことはしてやりましょう」父親にそういうと父…

ひとつ先

トミーはそれから来なくなった私としては寂しい気はするがそれよりも私にはやりたいことがあった私が東京に出てきた本当の理由私には小学校から中学までずっと、仲のよかった幼馴染みがいた澄子ちゃん彼女はうちの村に保険会社の出張所があった頃、私が小学…

ひとつ先

トミーも同じことを言う「ママって友達を大事にばっかり言うそのくせ、ママの友達っていないんだよ」私は笑い出して、トミーはきっと大丈夫だもし何かあったとしても仕方のないことだ私はそう思ったけれど「自分で計算して成績が落ちないようにちゃんとやり…

ひとつ先

トミーは「今の学校の勉強は簡単すぎるしみんな子供なんだ全然、話も合わないんだ」そう言って、私が読んでいる本を手に取ったトミーは私の読んでいる本が好きなのだ今、私が読んでいる本は息子が好きだった本でこういう所が血だなぁって思う史緒里さんはま…

ひとつ先

「学校に毎日行かないとダメかな?」私はこうやってトミーがやって来るのは嬉しい限りだが史緒里さんが知ったら烈火の如く起こるだろう「大学まで行きたいんなら学校に行かないで大検でも取ればいいけどそれは、ママが嫌がるだろう」私は自分が中学の頃を思…

ひとつ先

トミーは納得した「僕にはわからないけどパパがママを好きなのはわかる」「フフフ、恋とか愛は不思議でね欠点が魅力的に見えるのさパパは田舎で生まれて派手な女の子にいつも憧れていたけれど実際はクラスの隅で見ているだけだったんだでも、東京に来てママ…

ひとつ先

「勉強はパパに似てよくできるから大丈夫でも、友達はいらないからね」私は頷いた「わかるよ、でも、ママの見栄も考えてあげなよ!トミーが公立に変わったら赤っ恥をかくのはママだよママの友達関係はそれで成り立ってるからねトミーの方が大人なんだから公…

ひとつ先

「ママには逆らえない猫を飼ってはいけないとは言わないだろうけど、きっと、ママのおばあちゃんちみたいなすごく高い猫にするって言い出すよ何でも高けりゃいいって思ってるから」「それは間違いないよお金が高いほど、立派なものが手に入るのは確かだから…

 ひとつ先

どこにも村はあるのだそして、自分の生活を大切にすればするほどその小さな枠の中での位置は大事なものなのだしかし、そういうことはトミーにはわからないだって、それはそうだ世の中あげて、自由が大事だ個性を大切にしろ人よりも自分が大事だ見栄なんかく…

ひとつ先

多分、嫁よりも息子のことがよくわかっていただろういきなり、都会のカースト社会の戦いに入っていくしかないそんな仕事以外のこことを心配した夫もそうだったでも、私には嫁のことが手に取るようにわかっていただって、村だって同じようなものなのだ村の中…

ひとつ先

私は嫁が嫌いなわけではない嫁は息子と所帯を持った時もとにかく一生懸命だ嫁の友人たちの中では息子は大学も職業も全く問題ない母親の私が言うのもなんだが見た目だってそこそこいいその証拠にトミーは爺さんに似てジャニーズに入ったって遜色ないはずだ嫁…

ひとつ先

「ほら、この道を曲がったところに動物病院があるだろうあそこからもらって来たんだよ捨てられた猫を動物羽病院が保護して引き取り手を探してたからね」「アインが欲しいなアインも僕のこと好きそうだよ」「おじいちゃんもそうだったね世話は私がするのに田…

ひとつ先

猫を抱き上げながら「いいなぁ、うちも猫飼いたいな」私は笑いながら「飼えばいいじゃないかお父さんは猫好きでね小学校の時に猫を拾ってきてずっと、飼っていたんだよそれが、初代アインシュタイン田舎で飼うにはハイカラな名前すぎる気がしたんだけどその…

ひとつ先

息子が結婚してすぐに胃癌で死んだだいたい、なんでもいじいじ考える人で結婚式に東京に出てきたときに嫁の家の立派さに驚いて息子はちゃんとやっていけるのか心配して息子の結婚以来、そればかりを心配していたそして、孫が生まれると大喜びしたが孫に、な…

ひとつ先

もちろん、私にそのつもりはない部屋を借りて、死ぬまでのお金くらいは贅沢をしなければ十分にあるその上、年金ももらえる嫁が一緒に暮らすのを嫌がるに決まっているのにやはり、私の息子は少し、バカだ生まれてから一度も村を出たことはない五人兄妹の真ん…

ひとつ先

その上、この近くのタワマンに住んでいる何かとお金がかかるに決まっている本人は絶対、専業主婦今時、専業主婦は絶滅危惧種なんて言われているが嫁のクラスの人間たちの間では当たり前のことで仕事をしているのは医者か弁護士の母親私も世間的には専業主婦…