ただ、毎日を

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「ママは関係ないじゃん!
ママの育て方とか言わないで
本当におばあちゃんなんか大嫌いだ!」

真澄はぶるぶると震えだした
そして、さらに速水に詰め寄った

「なんてことを!
速水さん。ちょっと、来て頂戴!」

そう言って外に速水を誘おうと
玄関のほうに行くと
速水も。もう、すっかりうんざりしていたから

「お義母様、私は別にお話なんかありません
星人もこう言ってますから
お帰りになってください」

速水は人間関係がこじれたりするようなとき
どうにかして和解しようとか思うタイプではなかった
もう、うんざりな人だ
そう思うと、そんな言葉が口から出ていた

真澄はビックリした
何と言っても、自分は夫の母ではないか
そんな口の利き方があるだろうか?
怒りのあまり、星人がいるのも忘れて

「そんなことだから、人に脅されるのよ!
さっき、十万握らせたけど
あんたの過去やみぃさんの会社のいかかがわしいことで
お金を無心されたのよ!
いったいどうするの!!!」

おばさんであること

美也はそう考えた時にハッとした

大輔がスミカを性的に退けなかった理由

中高生の男子だから仕方がないと

一度は考えたが

もしかしたら、自分と同じかもしれない

同じ血が流れているのかもしれない

そう思ったら、スミカに文句を言うのはお門違いだ

美也は自分が母のようになってはならないと思うし

スミカを見ていると、体の関係を男と結ぶのは

彼女が男好きだからではなく

生きるためだと感じた

 

「お父さんやお母さんは?

いないの?」

 

「たぶんいるんだとは思うけれど

物心ついたときから施設で育ったし

良くは知らない

知りたくもないしね」

ただ、毎日を

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最近の星人は
なんだか父に似てきたと
嬉しく思っていたのに
今は義母の前で、本気で怒っていた

義母もそんな星人に

「星君!
子供は言う事を聞きなさい!
今はおばあちゃん
ママと大事な話しがあるの」

「嫌だよ!
おばあちゃん、いい加減にしなよ
早く、帰ってよ
何しにきたんだよ!」

「なんですって!」

真澄は速水のほうを向くと

「あなた!どんな育てかたをしたの!?」

おばさんであること

美也はスミカを見つめながら

母を思った


母はただ真面目な人だった

だから、美也が大嫌いだった

小学校の5年の時

従兄弟の中学生と抱き合っていた所を

見つかって

それ以来、美也は完全無視!

今に至るまで、喋った記憶がない


三人姉妹の一番下

姉たちも母と同じだった

食事すら作ってくれなかった

父がたまに見るにみかねて

お金をくれる


もちろん、自分が悪いから

仕方なかった


でも、大人になって

実は、自分のそれは

病気だったと知る


母としたら、ショックではあっただろう

だけど、自分の娘じゃない


美也は家庭の中では

全く無視される生活のなか

外ではより一層男の言う通りに

なったのかもしれない



ただ、毎日を

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速水は星人の弾いてくれるピアノを
大好きな紅茶を飲みながら
ソファで寛いでいた

凄い勢いで入ってきた真澄に
驚いて、立ち上がった

「ちょっと、速水さん
話しがあるわ!」

そう言いながら星人を見た
すぐに、この場を外して欲しかった
星人は察して、わざと立たなかった
無邪気な笑顔で

「おばあちゃん
僕のピアノ、聞いてよ!」

そう言いながら弾き始めた
真澄は星人のピアノには興味がない
クラッシックならまだしも
たいした曲でもないのに

「星ちゃん、今は勘弁して!
お部屋に行って!」

「嫌だ!」

速水は何も言わなかった

おばさんであること

美也の愕然とした顔を見て

スミカは


「あ、安心して!

大ちゃんは、いい子だよ

ちょっと馬鹿だけどねー」


今まで、大輔をこんな風に言った人間は

いなかった!

しかし、美也は同じように思った


「いい家ってやつは

羨ましいよ〜

ちょっとセックスしたくらいで

ママがでてくるんだもんね

人間って本当、不公平!」


美也は、やっぱり大輔と関係したのか

ガッカリした


「まあ、そんなこと

慣れっこだからね

気にしないで!

美人で上品な、育ちのいいママ

嫌ほどわかってるから」


美也は大輔に心を砕いたことは

スミカの言う通りだ

でも、自分は違う!

もしかしたら、スミカと同じかもしれない


ただ、毎日を

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真澄は何も考えられずに
とりあえず、家に置いてある10万ほどを封筒に入れると

「今日はこれで、帰って!」

従弟は封筒の中身を改めると

「こんなはした金で済んだなんて思わねえこったな
また、来るからな」

そう言って帰って行った
あの従弟がこズルいことはよく知っている
きっと、また来る
家を建てたいなんて・・・・恐ろしい
真澄は夫には話したくなかった

「放っておけ」

と言うに決まっている
すぐに出かける支度をすると
速水の家に飛んで行った
一度、タケオに会いたいと思ったが
今は海外にいる
どっちにしろ、悪いのは速水に決まっている