発達障害の母

何よりも、東京に行きたいって言うのが理由なのはよくわかる

それでも、どの子も単純で

とりあえず、お金持ちになりたいらしい

そして、社長になりたいのだ

そのうえで、職種を聞いたりすると

なんかでっかいことが出来るようなこと!

なんて単純なことを言っている

もちろん、田舎の若い子が全部が全部こんな子たちではない

農業を継ごうと真剣に考えている子は

そのために農大に行きたいなんて話すのだが

親のほうが、そのまま都会に染まって

帰って来なかったら嫌だから、田舎で数年遊んで

身を固めてから家を継いでほしいなんて言っている

 

田舎の人間にとって大学ってところは

四年間、都会で遊んでくるところなのだ

ほとんどの人間が大学に行っていないのだから仕方ないが

親たちの認識は

バブルの頃の東京の学生のちゃらんぽらんな奴らの話で

そこから、一つも進化していない

速水の悩み

実はこの言葉はタケオが付き合いたい女に
わざと投げる言葉だった
タケオは中学を出た時からこの仕事をしていた
そして、知り合う女は金で男を買う女しか知らない
その狭い中でしか恋はしない
そして、恋した女を落とすには、たいがいこの言葉を投げつけてみたのだ
だいたい、お金で男を買う女は
セックスは喜んでさせるくせして
心は絶対に開かない

でも、お金で男を買う甲斐性はあるし
それなりの仕事を持っていたり
それなりの立場であったりだから
本当は魅力ある女が多い
この女たちを知ったら普通の女の子なんかつまらなさすぎる

だから、速水を落としたかった
速水がハーミーであることは、この業界の男なら
誰でも知っていた
そして、誰もがお金関係なしに
速水の心を落としたいと狙っていた

タケオもその一人だったし
ハーミーの画像はバカほど見ていたから
会う前から恋してもいたのだ

だから、いつもの手法としてこの言葉を投げつけたのだ

発達障害の母

そんな大人しかいないのだから若い子たちは

どういうふうに自分のやりたいことを実現すべきかわからない

勉強ばっかりしていれば、勉強ばかりしているのはカッコ悪い

いいことではない!とちょっと、昔の価値観の大人だらけだし

農家を継ぎたいなんて殊勝なことを言う子には

ただただ、ちやほやするだけだし

東京に出たいなんか言う子に対しては

だまされるのがおちだからやめておけ!くらいのアドバイスしかできない

子供たちの中には、高校を出てからずっと

東京に住み、そして家庭を作り、それなりの生活をしている私は

話を聞いてもらいたいおばさんらしく

何かと、話をしに来たりする

 

速水の悩み

速水は親に反抗してこの世界に来たわけではないし
才能があるか、みぃにスカウトされたわけでもない
穏やかな普通の日常を送れないほど男好きだったからだ
沢村とミキもそこは普通の親ではない
沢村は文学をこよなく愛しているから
娘であっても人間が人間らしいことを否定しないし
ミキは経験者だ

高校を辞めて入った世界は楽しくて
好きなことをやってバカほどお金が入ってくる
これが普通の家にいたのならば
周りから非難の嵐だったであろうが
ここにさえいれば、周りはちやほやしてくれるだけだ
年齢的にやめたほうが夢があるのもわかっているし
これから先は世界を旅しながら
男がほしくなったら、男娼を買えばいい
それはそれで楽しいだろう
そう、思って生きていた

「あんた、最低の雌猫だな!」

帰り際に速水にタケオが投げつけた言葉
それが、速水を立ち止まらせた


発達障害の母

母は頑張る!とか夢!とかの言葉が大好きだ

まぁ、母が頑張るってことは

若いころから、朝・6時に起きて朝ご飯を作り

洗濯をして昼間で仕事をして弁当を食べ

そして夕方になったら夕ご飯を作って

それを食べて、片付け物をして寝る

普通の人が誰でもしている一日を過ごすことを

頑張る!という

そんな普通の人が過ごす平穏な毎日を

頑張らないと過ごせないのだ

私の親族やこの小さな村、町

そこには発達障害の母だけでなく、そんな人間が多い

だいたい、どの家もまともな人間はいないのではないかと

疑いたくなる

パチンコ、酒、女、男 泥棒、喧嘩、性犯罪

そんなものが生活の中に半分以上入り込んできている

平穏な毎日をものすごく努力しないと過ごせない大人たち

速水の悩み

タケオは今までのお金を払えばやってくる男たちと
全く一緒だった
顔がいいのは当たり前、優しいのは当たり前
歌舞伎町のホストならばもっと、イケメンも
もっと、腕のいいのもたくさんいる

速水はいつものように終わった後、すぐに帰り支度をした
あまりしゃべるのは好きじゃない
好きじゃないというよりか
何を喋ろうが彼らに興味がないのだ
彼らはこんな仕事をしているだけあって、だいたい
まともなことはしゃべれない
いや、これまで速水が普通だ普通だと言ってきたが
父親は東大の教授、勉強だって興味ないだけで
家庭での会話は生まれた時から、教養であふれていた
もちろん、ミキだって意図的にしたわけじゃないが
それが、ミキがあこがれて沢田と作った家庭なのだ

速水がお金を出して男を買う時に
おしゃべりがうまい男だけはやめてくれ!そう注文した
そいつらのしゃべりがうまいは
速水には糞みたいなしゃべりでしかなかった

発達障害の母

美しい緑、夜空には星がきらめく

家から見える景色は古代から存在したであろう

山々の美しさ

そして、家の後ろを流れる川

そこは、私の子供のころからは考えられないほど整備され

そして美しいものとなっている

子供の頃のように大きな石がゴロゴロところがり

その合間にごみが浮き出しているそんな景色は

もうどこを探してもいない

その美しさを否定しはしない

でも、私の中ではそれを思い出すことは

いつだって頭の悪い周りの人間に振り回された過去だけだ

亜美ちゃんのことは、少しいやな気持を残した

この美しい自然の中に住んでいても

若い子たちは、歌舞伎町や渋谷をうろついている

どうしようもない性欲におぼれている

若い人間たちと少しも変わらない

穏やかの空気の流れの中だからこそ

よけい汚く感じたのかもしれない