速水の悩み

速水は親に反抗してこの世界に来たわけではないし
才能があるか、みぃにスカウトされたわけでもない
穏やかな普通の日常を送れないほど男好きだったからだ
沢村とミキもそこは普通の親ではない
沢村は文学をこよなく愛しているから
娘であっても人間が人間らしいことを否定しないし
ミキは経験者だ

高校を辞めて入った世界は楽しくて
好きなことをやってバカほどお金が入ってくる
これが普通の家にいたのならば
周りから非難の嵐だったであろうが
ここにさえいれば、周りはちやほやしてくれるだけだ
年齢的にやめたほうが夢があるのもわかっているし
これから先は世界を旅しながら
男がほしくなったら、男娼を買えばいい
それはそれで楽しいだろう
そう、思って生きていた

「あんた、最低の雌猫だな!」

帰り際に速水にタケオが投げつけた言葉
それが、速水を立ち止まらせた