発達障害の母
そう言いながら時計を見ると
もう、昼食の時間だ
「よかったら、あそこの喫茶店ででも
一緒に食事しない?」
「あ、はい。でも。お母様は?」
私は母と食事をできるだけしたくない
そのぶん、心を込めて母の好きなもの
体にいいものを作るのだ
数種類作って目にも鮮やかに
母が喜ぶように気を配る
しかし、一緒に食事をして
こんなに食事がまずい人も
いないんではないかと思う
子供の頃の食事は白いご飯に
漬物、白いご飯にインスタントラーメン
白いご飯にとにかく
手のかからないおかず一品
その白いご飯も毎日違うできあがり
妙に硬かったり
柔らかすぎたり
とにかく料理と呼べるものが
出て来た試しはなかった
美味しいものは大概父の手によるものだった
発達障害の母
母は普段から自分脳内に浮かんだことを
気ままに話すから
トンチンカンなことが多いのだ
「ネコさんが村長になったおかげで
いいことはたくさんあったけど
あれを野放しにするくらいなら
前の賄賂まみれの村長の方が良かった」
説明はトンチンカンなのに
人の悪口はしっかり
言いにくいことも言えるのだ
「あ、恵子ちゃんは、ちょっと待ってて」
そう言って母には昼寝をしてもらう
恵子ちゃんのところに戻ってくると
「ごめんなさい。
その、一範って?」