逃亡
それでも、全く相手もわからないまま一週間ぐらいすると
幸喜が朝から慌てて飛び込んできた
「ばあちゃん、逃げないとやばいよ
夜中に変な化粧の濃いおばさんが
カップヌードル一個買ってさぁ
俺にやたら聞くんだよ
俺がばあちゃんと一緒に住んでるとは知らないみたいでさ
あの、高級マンションに急に婆さんが来ただろう?
息子と住んでるのか?とか
前にアパートから逃げてきた婆さんとお腹の大きい娘
そんなことをやたら聞いてきて、怖いよ~
ばあちゃん、逃げたほうがいいよ」
美佐子さんが心配して
「それ、どんな人だった?」
「あ、任せて!
帰り際にわからないよう写真撮った!」
それは幸喜にしてはしっかり撮れていて
ジャージの上下に濃い化粧
真っ黒な髪の毛を二つ結びにしている横顔
「ばあちゃん、知ってる人じゃねえの?」
いや、私にはまったく覚えのない女だ