魔女
くうちゃんがかっこいい人は
きっと優しいと勝手に信じている
私にはその、旦那という若い男は優しそうには見えなかった
そして、正野さんの言う、私が苦労していると言う
彼女の言った意味も解らなかった
私は家庭というものに対して、その頃
ものすごく固定観念に駆られていた
両親と子供で作られていた
親は子供をこよなく愛していて
何処の家も幸せに暮らしている
私の家だってほとんどそうだった
母は時折ヒステリックに怒ったり
父は酒を飲めば、だらしなく寝てしまう
なんてことはあったが
まぁ、何の問題もない家庭
わたしが大学で東京に出てきても
母は何かと心配して色々、宅急便で送ってくる
くうちゃんの家のように家庭内で暴力をふるう父
なんかがいる話はほとんどまれなことだと思い込んでいた