姉のこと

イメージ 1

康太も塾は知っていた
でも、学校の勉強についていけない子が行くところだと
思っていたのだ
康太の周りには中学受験という言葉もなかったし
世の中に私立の学校が存在することも
あまりよくわかっていなかった
四年ともなると、クラスの中でも
あの子は中学受験をするだとかいう話はあるにはあるのだが
康太にはあまりに遠い話で
まったく関係のないことだったから
耳も貸さなかったのだ

しかし、あの悪ガキは本当なら
この辺りの周りの土地をたくさん持っているだけで
祖父ちゃんも父親も、そんなに変わりゃしない生まれなのに
お金はバカほどあるから、嫁がとちくるって
自分の息子のバカを中学受験させることに決めたのだ

康太はその中学受験塾の中にこそっと入って行った
すると、目ざとく見つけた、事務のおばちゃんが

「あんた、この塾の子じゃないよね
あ、入塾希望かい?」

そう言うと、急いでパンフレットを大き目の封筒に入れて

「これをお母さんに見せな!
そして、良さそうなとこだったって言うんだよ」

そう言って飴をくれた
康太はパンフレットをもらうと、公園のベンチに走った