発達障害の母

母には絶対に変えない個性と思い込みがあって 私はそこが苦しく、たまらなく嫌いなのだが それは発達障害の人間特有のもので 許せはしないが、私のこの家を出てからの価値観をすべて覆した 人間なんて死なずにいさえすれば幸せなのだ 発達障害の母と酒を飲む…

発達障害の母

緊張して私を見ている恋ちゃんの目を見て 私は、どうでもいいんじゃないかと思った ここで、真面目な親戚を装って 歌手なんか歌がうまいだけではどうにもならないから 勉強をしっかりやって、まともなところに就職しなさい! ここに帰って来たばかりの私なら…

発達障害の母

その彼女もうまかったし 最初は事務所にお金を出してもらって 華々しくデビューしたのだが それも、ほとんど売れずに、その一曲をもって 地方を回って回る人生 結婚もせず、親に山を売ってもらってCDを出し 親に田んぼを売ってもらって、各地に歌いに行く …

発達障害の母

私は慌てて止めようとするし 恋ちゃん自体は恥ずかしくて、なかなか歌い始めない その、母親だけが歌えと叱り 母は 「恋ちゃん、頑張って!歌手になれるかもよ」 いい加減なエールを送る 恋ちゃんは母親が激怒寸前になって初めて歌った 私は素人で耳もよくな…

発達障害の母

母親が反対ならば、何の問題もない 母はその母親のために灰皿をだしたり コーヒーを淹れたりする 「久しぶりだねぇ なんか、小学校以来だしね お姉ちゃん、東京で立派な生活してるんだって?」 子供のころ、親戚一同、年上ならば、 お姉ちゃんと呼んだことを…

発達障害の母

それでも、母は約束したんだから 何とかしてちょうだいと断ろうとはしない そして、日曜日はやって来た やって来たのは真面目そうな可愛い女の子だった その母親もついてきた ああ、久しぶり、というか子供の時以来だ 金色に染めた髪の毛は上のほうは真っ黒…

発達障害の母

恋ちゃん・・・・・ 母の従妹の結婚した相手の弟のところの子供だ こっちに帰って来て 話に聞いたことはあるが、確か、女の子としか知らない 『恋』って名前だってことが印象に残ったくらいだ 田舎ってやつは、だいたい、みんな親戚なのだ 「それで、あんた…

発達障害の母

母親にうちの夫の仕事をいくら説明しても理解できない 母がわかるのは小売業の商売人 田舎によく来る、怪しいマッサージ器を売りつける セールスマン 町役場の職員や地元の公務員 だいたい知り合いは農家、土木作業員、 地元企業で働いているパートさんたち …

発達障害の母

どっちにしろ、私の従妹の子供は この村や町出身子は大学に行く気はない いや、行けないと言ったほうが正しい 将来に何の心配もしていないのだ なりたい職種がなければ、高校を出てアルバイト代わりに 女の子なら近くのうどん屋なんかの飲食店で働き 男の子…

発達障害の母

何よりも、東京に行きたいって言うのが理由なのはよくわかる それでも、どの子も単純で とりあえず、お金持ちになりたいらしい そして、社長になりたいのだ そのうえで、職種を聞いたりすると なんかでっかいことが出来るようなこと! なんて単純なことを言…

発達障害の母

そんな大人しかいないのだから若い子たちは どういうふうに自分のやりたいことを実現すべきかわからない 勉強ばっかりしていれば、勉強ばかりしているのはカッコ悪い いいことではない!とちょっと、昔の価値観の大人だらけだし 農家を継ぎたいなんて殊勝な…

発達障害の母

母は頑張る!とか夢!とかの言葉が大好きだ まぁ、母が頑張るってことは 若いころから、朝・6時に起きて朝ご飯を作り 洗濯をして昼間で仕事をして弁当を食べ そして夕方になったら夕ご飯を作って それを食べて、片付け物をして寝る 普通の人が誰でもしてい…

発達障害の母

美しい緑、夜空には星がきらめく 家から見える景色は古代から存在したであろう 山々の美しさ そして、家の後ろを流れる川 そこは、私の子供のころからは考えられないほど整備され そして美しいものとなっている 子供の頃のように大きな石がゴロゴロところが…

発達障害の母

そこからは二人が決めることだ 田舎に住んでいた昔の私は無知で子供だったから 何も見えなかった あの頃の私ならば、今度のことなんか何も見えなかった 母もそうだ、 母は直感で妊娠しているのではないか そう考えたし、昔、近所で会った兄妹相関のことは思…

発達障害の母

中高生の恋は都会も田舎もない あまりに稚拙で人生を棒に振ることもある 亜美ちゃんは家庭の中で、相手は弟だ とりあえず、今回は手を出したが これからは二人の問題だ 「帰ったら、哲也君とちゃんと話して 亜美ちゃん自身が今どうしたいかを大事にするんだ…

発達障害の母

「そう、でも、どこの家庭もそんなものよ 親は親で悩みも多いし そんなに子供のことに構っちゃいられないのが 普通の家庭よ 亜美ちゃんは優等生だから余計 心配しなくてもいいって思ってるんじゃない? 弟君のほうが心配かけそうだけどね」 すると、亜美ちゃ…

発達障害の母

「あなたは弟君のこと どう、思っているの?」 亜美ちゃんが妊娠していたことに苦しんでいて 弟から離れようとしているのはわかるけれど 本当のところはどうなんだろう 妊娠は困るが、そのことで弟を嫌っているなんて わからない まさか、この年で愛している…

発達障害の母

弟は亜美ちゃんが本当に好きなのかもしれない それならば、話は違う そう、おぞましいものではない 私はこの田舎で母に育てられ 父はその母を愛したことへの後悔や人間としての常識や 生活の中に母へのイライラしかないのに それを隠し、時には爆発させ、酒…

発達障害の母

「結構お金かかったんですよね? 私、でも、返せません よかったら、この家でお手伝いさんとして使ってくれませんか?」 私は旅費もそうだけど、今回の手術に関しても 親からお金をもらうつもりはなかった 「そのことは気にしなくていいわ お手伝いさんはい…

発達障害の母

すべてが終わってタクシーで帰って来て 居間でくつろいでいる亜美ちゃんは 本当に心からほっとしたようだった 初めて心からの笑顔で 「あ~良かった、本当に良かった」 その気持ちはよくわかった 私はもう、その話はしないようにして 「体調が良ければ明日に…

発達障害の母

そんな二人がゴロゴロ子供を作り その中に母がいて まったく愛されたり、気を使ってもらったり 勉強ができないことすら気が付かれず そんなふうに育ったとしても 今、母は幸せなのだ だから、弟の子供であっても生んではいけない その手伝いをすることが罪深…

発達障害の母

亜美ちゃんは首を激しく振った 泣きながら 「親には絶対話せない! 赤ちゃん、どうすればいいの? 絶対産めない!誰にもわからないようにどうにかしたいのに どうにもならないの」 泣きじゃくりながら話す亜美ちゃんに 私は心を決めた 「わかった! 東京に行…

発達障害の母

田舎の土曜日のこの時間の一両編成の電車 他に誰も乗っていない 「ねぇ、亜美ちゃん 叔母さんがこうして誘ったのは 実は大学受験の下見のためっていうのは言い訳で もしかしたら亜美ちゃん、妊娠してるんじゃないかって 違ったら、ごめんね でも、きっと、誰…

発達障害の母

「おばさん、僕もつれて行ってよ! 姉ちゃんばっかり、いいな~」 「君も東京の大学行くのならば 行ってみとくのは悪くないと思うけれど」 「まさか、俺は無理! 姉ちゃんみたいに頭良くないから」 そう言って姉を見る目に私は、あ、と感じた 彼はこの姉に恋…

発達障害の母

私の話に、きっと、何か感じたのだろう 「お母さんがいいって言ったら・・・」 少し迷った感じだったが、そう答えてくれた 私は迷わずに、朝食の支度で忙しそうな母親に話に行った 気さくで明るい母親は 「え~ほんとにいいの 泊まらせてくれるなんて助かる…

発達障害の母

母がうまいこと彼女に話しかける 「あんた、おばあちゃんは元気? おばあちゃんがあんたの大学の学費だしてやるんだって 嬉しそうに話してたよ」 私はその機会に飛びついた 「お勉強、よくできるんですってね! 東京の大学、目指してるんですって? 下見とか…

発達障害の母

そんな私にできた彼氏が青山学院のお坊ちゃま 松濤か何かの生まれで、立派なマンションを買ってもらっていた 田舎者の私をハイジと呼んで優しかったが 当時の私には彼が子供ができるのもかまわない付き合い方をすることに 何も言えなかった あの頃、少しでも…

発達障害の母

次の日から私も母と一緒に歩くことにした 間違いであってほしいが 私には学生時代の自分がよみがえった 田舎の小さな村から東京の大学に入った 誰一人知り合いはいなかった 何を着て何を喋ればいいのかもわからない ただ、おとなしく講義を教室の片隅でひっ…

発達障害の母

どうしてなんだろう あの弟なら田舎のやれる子をひっかけるのに 苦労することはないだろうに そう、考えはしたが、実際に彼女が妊娠しているかどうか はっきりしたことはわからないのだ そんな日々が続いて,はて、どうしてものかと悩んでいると 朝の五時ご…

発達障害の母

こういう話の時に母の瞳の奥に 口ではいやらしそうに話すのに 嬉しそうな光が宿るのが悲しくなる そう聞いてから、私はできるだけまめに その窓を見ることにした 弟というのは、この辺りの中学生そのものだ 悪でもなければ真面目でもない 私の同級生にもたく…