発達障害の母

二十歳前の田舎出の娘に

心は純粋でも頭がちょっと足りないで

女のベッドの中での扱いが抜群にうまい修二

どう考えてもまともに生活できるわけはなかった

毎晩、陶酔して次の日なんかどうなってもいいようなセックスをする修二に

私が大学など見向きもしなくなる日は

あっという間にやって来た

修二が店に出れば修二のファンだという

女の子たちの取り巻きに嫉妬して

毎晩のように店に行き

レポートさえ提出すれば単位はもらえるからと

心配してやって来た恵子ちゃんを

追い返した


修二が普通の男だったら

とっくに破綻しているような毎日なのに

修二はただただ、私をひたすら愛してくれた


今でも、あの頃を思い出すと

まるで蜂蜜の中で溺れていたような

そんな毎日だった

速水の悩み

風俗に関すること以外に
速水にはなんの才能があるのだろう?
小さな頃に色々習い事をさせた
水泳教室、バレー、ピアノ、書道、絵画
どれも、まぁ、普通にやれる程度だったし
本人ももっと、やりたいなんてこともなかった

今、速水が持っている莫大なお金は
すべて、突出した性の才能に関するものだけだ

恋愛も才能が必要だ
うまくやれるのだろうか?
母として余計な心配だとはわかっているが
速水は本当に沢田を愛して
苦労して一緒になって生まれた子供なのだ
速水の望むことはなんでも叶えばいいと
ミキは心から願う

発達障害の母

食費はかけない

服に興味はない

踊るのも黒服の格好で踊るから

人気があったんだし


そうなると、お金はすぐに溜まる


私は一緒に住んだらどんな風になるか

全く想像できないバカだった

今、思えば恋愛なんか全くしたこともなく

生真面目にセックスは子供を作るための

目的のようなものとしか知らなかった

もちろん、キスすらはじめての田舎から出たての女の子と

幼い頃からどっぷりと水商売の中で暮らし

女の体の扱いはプロ級の修二との出会いは

まじめに東京で立派な人間になって田舎の母からの呪縛をときたいそんな私を

あっという間にもっと、下の世界に

私を引きずり落とした


速水の悩み

努力という言葉がもてはやされるが
その先に、努力に見合うものは待ってはいない
そこには、やはり自分がもともと持っている
ものにしかたどり着かない

速水はここに帰って
一体どうするつもりだろう
完璧な普通の女の子になっても
その、タケオという男娼との
接点なんか一つもない

速水は料理教室に通い
父親にひたすら美味しい料理を作り
フラワーアレンジメントを習ったり
そのほかは、ほとんどミキのそばにいた

速水は学校の勉強ができた方ではない
父は大学教授だがその才能はなさそうだ

発達障害の母

修二はその頃興味があったのは

ディスコで踊ることだけだった

踊りはうまかったし、見た目もいいので

フロアボーイとしては足手まといなのだが

修二が女の子たちの間に入って踊るだけで

絵になったし

修二目当てに来る子も多かったらしい


でも、他に興味があることなんか何もなかった

食べ物もほとんど食べない

これは、私の母もそうなのでよくわかる

食事には興味がなくて、

世の中が人間は三食食べるものと

決められているから、そうしなければ

まともじゃないんじゃないかと不安になるから

食べるのだ


出来るだけ普通に見られたと思って生きている

だから、興味の対象が踊りで

そのことで褒められるとものすごく頑張る


お金には不自由していなかった

今まではお金が貯まった頃に

母親がフラッと現れて持って行ってたらしい

速水の悩み

恋愛なんかそんなもの
でも、それは今だからわかることだ
速水はやっと今
男という異性を初めて
体というもの以外で見つめたのだ
ミキは速水の恋を心から
可哀想に思う

タケオは速水のような子に
恋などしない

それならば優人の方が人間として幅がある
やさしならば速水のことを
しっかり、一人の人間として見てくれるだろう
優人なら良かったのに

何事も思い通りにならず
でも、頑張ればなんとか
自分の思い通りの人間になれる
そう思っていた
康太と頑張った日々がバカらしくなる

発達障害の母

修二はもちろん青学の

大学生なんかじゃなかったし

話を聞けば、いや聞かなくても

中学ほどの勉強の知識もなかった

母親とそんな生活をしてきたのならば

勉強をしなければならないなんてことは

人生の中で全くないのだ

ただ、生きていかなければならなかった

勉強どころか

母親にもっと、バカの真似をしろとまで言われて

バカであればあるほど

母親は男を捕まえやすくなっていたのだ

そんな境遇になったことはなかったから

安易に修二の母親を詰ることはできなかったが


私は修二の体に夢中なことを

誤魔化すように修二を

母親から話しておきたかった