小百合の幸せ
一穂の母親は、奔放なだけあって
歯に衣着せぬ言い方をする
でも、心から褒めてくれているようだ
「それで、その彼が起業して
会社を興すんでしょう、
部下が超エリートなんですって?
まれにいるわよね~
本当の意味で頭のいい人
頭がよすぎて、高校や大学なんか行かなくても
すぐに成功する人
小百合さん、目が高いのね
章子ちゃんも幸せだわ
あ、でも章子ちゃんは大学に行くんですって
家政科か何かに入ってスーパー専業主婦になるって
もう、今から勝ち組ね」
そこには皮肉の匂いもなければ
取り繕って話している感じでもなかった
心から喜んでくれているのだ
「ああ、まあ、そうね」
「いいわね~私って、不倫なんかしちゃったでしょう
子供にどうしろこうしろなんて言っても
聞きゃしないし」
小百合は章子の話題は嫌だった
「あれから、どうしていたの?」
「不倫相手と一緒に住んでたんだけど
すぐに飽きちゃって、2か月もしないうちに
追い出しちゃった」
「追い出した?」