小百合の幸せ

「あ！」

その人は小学校で章子の友達の母親だった

小学校五年でもう、話もしなくなった人だ

それまでは、お互いの家を行ったり来たりして

子供も交えて仲良くしていたのだが

彼女、里山もその頃から学校の参観日や

行事に来ることは無くなった

最初に聞いたのは章子の口からだった

「あのね一穂のママ、浮気して家を出て行ったんだって！」

「え？」

あわてて、共通の友人に連絡してみると

一穂の兄の塾の先生と不倫して

離婚したらしいとのこと

親権も子供たちがママにはついていきたくないと

父親にあったので

母親は家を出て行ったらしい

そんなことは言語道断

第一、章子に説明がつかない

小百合は大騒ぎしたが

章子のほうはあっけらかんと

「一穂が教えてくれたの」

そう言って何事もなかったかのようにしている

ほんとうはそれが一番良いことなのだが

小百合にはわからない