マニュアル

章子は唇をかみしめた

誰にも言えないこと

実は章子はピルを飲んでいる

雅紀が大好きだけれど

章子は今、すぐに子どもを産むとか

結婚をするとかは考えられない

どんなにセックスがそんなことと直結していると話しても

純粋で素直に何事も受け取る彼なのに

章子の体を求めることは辞められない

章子はそのギャップに戸惑い

男の子とはこういうものかと思ったり

いや、雅紀が少し異常なのかもしれない

そのはざまで誰にも相談できずに悩んではいた

もちろん、求められることは嬉しいし

絶対的に愛し合っていると思いたいから

どうしても断れない

速水は黙ってしまった章子に頷いた

「大丈夫、章子ちゃんがいつもそばにいて

心から愛してあげれば、それは克服できる

幸せだと思うことが一番なのよ

私も・・・・」

速水はここまで言うべきか迷ったが

雅紀のことで悩んでいる章子には話すべきだろう