理想の父
「あ、あんた康ちゃん!」
ラーメン屋の爺さんはすぐに康太に気が付いた
「あ、こんにちは!
お久しぶりです。
よく僕だってわかりましたね」
ラーメンに他のお客さんよりかはチャーシューを
多めに乗せながら
「何言ってるんだい!
親父さんにそっくりじゃねえか!」
康太がラーメンを食べ終わって
父親のことを聞きたいと言うと
「ちょっと、出てくるからな!
その中に塩いれるんじゃねえぞ!」
息子にそう言ってエプロンを外した
タワーマンション下の公園のベンチに腰を下ろす
「恥ずかしい話だが、うちの息子はバカでね~
勉強ができないだけじゃなく、舌もバカだときてる
なかなか引退できないね~」
「あ、忙しいなか、申し訳ありません」
「いや、いいんだよ
康ちゃんの親父さんの話は、したくても
親父さん、喋らない人だったから知り合いも少なかっただろう
こうして、話を聞きに来てくれて嬉しいよ
事故で死んじゃったから
康ちゃんだって、親父さんとゆっくり話すなんてなかっただろう?」