恋をしたとき
速水は章子の気持ちはよくわかった
しかし、本人が動くならともかく
自分が何かしてあげることはできない
「章子ちゃんは将来何になりたいとかないの?」
今の章子は本庄雅紀のことで頭は一杯なんだろう
「大学には行かずにお嫁さんになりたいわ!
別に、小さいころからやりたいこととか
なりたい職業があったわけじゃないし
パパの事務所を継げとも言われたこともないし
大学に行って資格を取らなければならない仕事には
つかないから」
章子は今はひたすら雅紀に会いたい、それだけなのだ
それから、数か月
何となく心に引っかかるものがあっても
章子のことで自分が動くのは違う気がした
それに、恋は両思いでなければ
章子がどんなに雅紀に恋い焦がれようが
どうしようもないことだろう
雅紀は少年院にでも入ったのかもしれないし
章子の手の届くところにはいないだろう