秋風

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大木は5才のときに今の家に引き取られたのだ
これがみぃの完璧に有能な調査員にもわからなかったのは
今の大木の家がそれを隠すことに全力を尽くしたからだ

大木祐介
祐介はいまでもはっきりとそのときを覚えていた

祐介は毎晩,母親に絵本を読んでもらってから
8時には寝るのが日課だった
その日は7時半になっても母親は絵本を読んでくれそうになかった
夕食に食べた茶碗や皿を台所の流しにつけて
その前に立ったまま動かなかった

それが母親と二人で食べていた食事の最中に
かかってきた電話のせいなのは五歳の祐介にも
よくわかっていた
そんなショックを受けた母親は祐介が初めて見る母親だった

祐介は我が儘な子供ではなかった
母親は厳しい人で、祐介の教育にも熱心な人だったが
いつも、大好きよ!私の宝物だわ!
そういって抱きしめてくれるから
我が儘を言わなくても
ちゃんと待っていれば母は祐介の願い事を
聞いてくれることを知っていたのだ

その夜も、母の様子は普通ではないが
絵本を持ってベッドで待っていれば
母はベッドに来てくれると信じていた