不思議なことを数えれば
ミキの人生は普通の常識的な人になることだった
そして、そのことが最近バカげたことだったと
教えてくれたのは速水の人生なのに
それでも、まだ、自分の常識的な人間
標準的な日本人になりたいという思いを否定できないでいる
もちろん、仕事に貴賤はないはずだ
でも、やはりなんとなく釈然としない
夫ならば、その、究極の二人の愛を
面白がり、文学としてしまうのだろうが
ミキには無理だ
だいたい、もうすぐ子供が生まれると言うのに
果たして本当にそんな父親でいいのだろうか
ちょっと、勇気を出して聞いてみる
「ねぇ、タケオさん、仕事、ちゃんとしなくても
子供にとっていいのかしら?」
速水は少し考えて
「私ね子供を集団で育てるのはやめようと思ってるの」
「え?それって、幼稚園や学校にやらないってこと?」