不思議なことを数えれば

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みぃとは深い話をしたことは一度もなかった
ミキは康太に勉強をさせ
一生懸命になっていた時
最初はみぃだって、まともに育てなきゃ
そう心に誓っていたのだ
しかし、母が連れ去ってしまった
速水が高校を中退して、速水を預けるまで
みぃのことは母に一番似ていると決めつけて
心の奥底ではちょっと、嫌な思いを抱いていたのだ
みぃにしてもあの境遇で初めて愛した正二が
死ぬまでミキを愛していたことを知っていたから
口に出さないまでも
お互い複雑な胸の内の姉妹でもあったのだ

しかし、ここに来て初めて
みぃは思っていたことを口に出した

「あの時ね、正二さんと一緒になりたかったの
そして、お父さんとお母さんのように
貧乏な長屋で二人で暮らして
ごく普通の暮らしがしたい人だと思ったの
でも、正二さんは殺される前日までお姉ちゃんのことを思い
お姉ちゃんのために私にすべての財産や
会社をやっていく能力を詰め込んでくれていたのよ

わたしだって、普通に結婚して普通の子供を持ちたいと
ずっと、思っていたの
まぁ、この仕事だし、あきらめてはいたんだけどね
速水がここに入って来た時に
この子も私と同じ道を歩くしかないのかと
悲しい思いをしたのよ」