速水の悩み

「だいたい、家に引っ込んだらタケオとの接点なんか
全くなくなってしまうじゃない
そこら辺の普通のお嬢様は、男娼なんか夜な夜な呼ばないよ」

みぃはそこまで言ってはっと口を押さえた

「あ、ごめん!」

ミキが何もかもあきらめているとはいえ
娘のことだ
ちょっと、言いすぎた
みぃはあの家から母に連れ出されて以来
どっぷりと性の商売の世界で生きているから
普通に生きている人間たちに気を遣うのを忘れてしまう

でも、きれいごとじゃない!
だれだって、性的なことは抱えているし
お金で処分できることには普通の人だって
いや、普通の顔をしている人間こそ
えげつなく風俗を利用している

「いいの、わかってるから
そうね、そういうことなんだったら
いつまで続くかわかんないけれど
普通の女の子を持った幸せを今だけでも楽しむわ」

そう言って帰っていくミキを気の毒そうに見送りながら

よく、テレビのコメンテーターや教育関係者が
親が愛情をもって育てないから
若い女の子が自分の裸をさらしたり、体を売るようなことをする
なんて言うが、それは全く間違いだ
もう、刷り込まれたDNAでしかないのだ
それを責めるのは酷すぎる