手に入れた物

園田さんってひとは、この上品な客室乗務員の
娘さんを育てた人だ
当然、良識のある生活をしていたんだろう
ちょっと、聞いてみたくなる

「母のどんなところが良かったのかしら?
家ではまともに料理もできなかったし
家事なんかまともにしなかったでしょう?」

何となく意地悪な聞き方になる?
あんな母にそんな高額な遺産を上げなければと思うなんて
ミキとしてはそんな気持ちにもなる

「ああ、家事は父がプロ並みですから
私の誕生日には子供の時から父が焼いたケーキが出てきたんですよ
お母さん、あ、私、そう呼んでいたんです
ごめんなさい」

ミキはびっくりしながらも

「いえ、全然、かまいません」

「私はお母さんがいませんでしたから
本当に父だけでなく私も嬉しくて
父はいつだって完璧なケーキを作ってくれていたんですけど
お母さんがいた年は、ホイップもぐちゃぐちゃで
でも、すごく楽しかったんです」