康太の深淵

「その話、お母さんにした?」

「したわ。
私のやりたいことには何も反対しないって!
意味わかってないのよ
まるでマニュアル!マクドナルドで笑って接客するみたいに
娘には完璧な答えはこれって決めてるみたいな感じ
私はマニュアルで育てられるのはごめんだわ」

「世間で決められているようなマニュアル通りに
育てられることって、そんなに嫌かな?」

「弁護士さんにはわかんないわよ
マニュアル通りに勉強して、立派な大学に入って
弁護士さんになっているんですもの」

そう言われて、康太は困った
しかし、自分には悪いうわさから守るべき妻はいないし
姉はもう、そこは超越している
親戚は怪しげな人間ばかりだ

「ははは!全く違うよ!
僕の母親は男が大好きで、男のためなら
子供は捨てるわ、売るわの人だったよ」

その言葉で優未は驚いて
そして、康太の話を真剣に聞こうと思った
だいたい、大人はこういうことは隠す
父親だって嫌いじゃないが浮気相手のお姉さんを
秘書だとか言い出す
私をなんだと思っているんだろう