康太の深淵

「夢なんかないの!
だから、パパと暮らしたいのよ
ママと一緒にいれば私のこれからは
今の私にだって言えるわ
有名私立名門女子高、勉強はしなくても大学までは行ける
就職はママのほうのおじいちゃんの知り合いが
大手の企業のお偉いさんばかりだから
私は有名企業のOLさんには間違いなくなれるわ
もし、働きたくないとごねても
お嬢様として家事手伝いでもしていれば
おじいちゃんが面倒を見てくれて
私は結婚相手を探せばいいのよ
才能なんて何にもないから
こんな人生が待っているだけなのよ
全くつまらないわ」

康太はこの、中学生をうらやましく見つめた
そうだ、そうだろう
それでいいじゃないか
勉強するのに、どんなに苦労したことか
康太は勉強が好きだったわけではない
普通の人間になるための切符を手に入れるためには
勉強しかなかったのだ