康太の深淵

最初はそれも可愛いと思えた
康太は特に子供の頃は
あの、碌でもない母がそばにいて
母の男関係に心休まる日がなく
姉のミキが帰って来てからは
二人で必死に勉強で生活を打開しようと
緊張した日々だった

家庭の中でミツホがボケをかますのは
なんだかほっこりして嬉しくもあった

それが、いつの頃からだろう
たぶん、康太の中から
ミツホへの恋心がすっかり消え失せた頃だろう