全く何もしないまま

正二は小さなころから教育テレビだけを見て育ったから
普通の子供よりもまっすぐな間違いのない常識を知っていた
だから、先生の気持ちはよくわかった
しかし、ここの人間たちがない頭を絞って
何とか皆で立派な子育てをしようとしているのも知っている

「先生、僕はここで生まれて、ここで育ったんだ
ここの人たちは決して僕に暴力も振るわないし
すごくかわいがってくれるんだよ
職業が子育てには問題があるのかもしれないけれど
僕自身がしっかりしていれば問題ないでしょう?」

そのしっかりした口調に教師は頷いてしまう
確かに小学校での正二の態度は全く問題なかったし
勉強に関しては問題ないどころではなく
教師も知らないようなことをよく知っている

立派なやる気のある教師にぶつかると
必ずこのやり取りが繰り返されて
正二は中学三年になった